FT8 と AGC ― 2026年06月19日 22時05分29秒
FT8運用テク
WSJT-X / JTDX の AGC 設定について、少し整理してみます。
WSJT-Xのユーザーガイドでは、受信レベルについて
「無信号時のノイズレベルをおおむね30dB程度にし、AGCはOFF、またはRF Gainを下げてAGCの動作を最小限にするのがよい」
という趣旨の説明があります。
これ、単に
「AGC OFFにすると感度が上がる」
という話ではありません。
本質は、
強い局に引っ張られて
受信機全体のゲインが下がり
同じパスバンド内の弱い局まで沈んでしまう
これを防ぐためです。
FT8では、2.5〜3kHzくらいの受信帯域の中に、強い局も弱い局も同時に並びます。
たとえば同じ帯域内に、
・+20dB級の強いローカル局
・-20dB台のDX局
が同時にいたとします。
AGCがONだと、受信機は強い局に反応してゲインを下げます。
すると、その強い局だけでなく、同じ受信帯域内にいる弱いDX局まで一緒に下げられてしまうことがあります。
FT8でAGC OFFが推奨される理由はここです。
AGC OFFなら、強い局は強いまま、弱い局は弱いまま、できるだけ固定されたゲインでWSJT-X/JTDXへ渡せます。
つまり、
「強局に弱局を巻き添えにされにくい」
ということです。
ただし、ここが大事なのですが、AGC OFFはかなりシビアに受信レベルを調整する必要があります。
自分の場合、6mだけでなくHFでも、無信号時の入力レベルはだいたい25dBくらいにしています。
30dBぴったりを狙うというより、少し余裕を持たせる感じです。
6mでは突然Esで近距離局が強烈に入ったり、同じ地域のローカル局が非常に強く入ったりします。
HFでも、コンディションや時間帯によっては、強い局と弱いDXが同じ帯域内に混在します。
そのため、
・PREAMP
・ATT
・RF Gain
・USB/AF出力
・PC側入力レベル
このあたりをかなり丁寧に追い込む必要があります。
AGC OFFは、設定すればそれで終わりというより、
「自分の受信環境に合わせて、過不足のないレベルに追い込む」
という運用だと思っています。
ただし、AGC OFFにも当然デメリットがあります。
強烈なローカル局、いわゆる凶信号・狂信号(笑)が出てくると、受信機やUSBオーディオ入力が過大入力になる可能性があります。
その場合は、
・WSJT-X/JTDXのレベルメーターが赤に張り付く
・ウォーターフォール全体が濁る
・強信号の周囲に変なスプリアスっぽい線が出る
・そのスロットだけ弱信号のデコードが明らかに落ちる
こういう現象が出ることがあります。
この場合は、AGC ON/OFF以前に、まず過入力対策です。
優先順位としては、
PREAMPをOFF
ATTを入れる
RF Gainを少し下げる
USB/AF出力やPC入力レベルを見直す
それでも駄目なら、状況限定でAGC FAST/MEDやJTDXのAGCcも検討
という感じでしょう。
JTDXには AGCc という機能があり、これを使って入力レベル変動をある程度カバーするという考え方もあります。
自分はJTDXのベータテスターでもあるので、以前は
「無線機側AGC ON + JTDX側AGCc 有効」
を基本にしていた時期もありました。
これはこれで実用的な設定です。
特に、強信号が多い環境や、入力レベルの変動をある程度ソフト側で吸収したい場合には、AGCcは有効な手段の一つだと思います。
ただし、AGCcはあくまでソフト側の補助機能です。
受信機の前段、ADC、USBオーディオ入力などが本当に過大入力で飽和している場合、それを根本的に救うものではありません。
そこは、
「AGCcがあるから何でも大丈夫」
ではなく、
「まず受信系を適正レベルに追い込む。そのうえで補助的に使う」
という理解が必要だと思います。
現在の自分は、
無線機側 AGC OFF
無信号時25dB前後
強信号時に飽和しないようシビアに調整
必要に応じてATT/RF Gainで追い込む
という設定で使っています。
特に6m DXでは、弱いEUや中央アジア方面を拾いたい一方で、近距離の非常に強い局も同じパスバンド内に出てきます。
この状況では、AGC ONで強局にゲインを引っ張られるより、AGC OFFで固定ゲインにして、入力レベルを自分で追い込んだ方が結果が良いと感じています。
もちろん、これは環境次第です。
無線機、アンテナ、PC入力、ローカル局の強さ、バンドの混雑度、使っているソフトによって最適解は変わります。
ただ、FT8/FT4の基本的な考え方としては、
AGC OFFは「感度アップ」ではない
強局に弱局を巻き添えにされないための設定
無信号時25〜30dB程度が実用的
30dBは絶対値ではなく目安
AGC OFFは受信レベル調整がかなりシビア
強烈なローカル局、いわゆる凶信号・狂信号(笑)には過入力対策が必要
JTDXのAGCcは有効な補助手段だが、過入力そのものを救うものではない
最終的には自分の受信環境で追い込むしかない
という理解でよいと思います。
FT8は弱信号モードですが、実際の運用では
「弱い信号をどう拾うか」
だけでなく、
「強すぎる信号をどう扱うか」
もかなり重要です。
特に6mでは、ここが意外と効きます
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