☀️ 太陽光発電を検討している方へ ― 2026年06月08日 12時17分11秒
なぜ私は、太陽光発電の電波障害について各方面へ提言を送ったのか ― 2026年06月08日 15時33分27秒
なぜ私は、太陽光発電の電波障害について各方面へ提言を送ったのか
先日、住宅用太陽光発電設備を検討している方に向けて、契約前に販売業者へ確認してほしいことをまとめた記事を公開しました。
太陽光発電そのものを否定する内容ではありません。問題にしているのは、パワーコンディショナー(PCS)やその直流・交流配線などから発生する不要電波が、近隣の無線通信やラジオ受信に影響することがある、という点です。
そして私が最も伝えたかったのは、
ということでした。
記事を公開した後、私は注意喚起だけで終わらせず、住宅メーカー、業界団体、太陽光発電の比較・紹介事業者、共同購入事業の運営会社など、複数の関係先へ提言を送りました。なぜ、これほど多くの相手へ連絡するのか。今回はその理由と狙いを書いてみたいと思います。
一社に言えば解決する問題ではない
太陽光発電設備による電波障害は、一見すると「機器のノイズ」の問題に見えます。しかし実際には、単なる機器トラブルではありません。
設備が導入されるまでには、多くの事業者や担当者が関わります。
- 住宅を販売する会社
- 太陽光発電設備を提案する会社
- 設計を行う担当者
- PCSやパネルを選定する担当者
- 実際に配線・設置を行う施工会社
- 機器メーカー
- 比較サイトや紹介事業者
- 補助制度や共同購入事業を運営する自治体・民間会社
この流れの中で、誰も近隣の電波環境を確認しなければ、最後まで確認されないまま設備が稼働してしまいます。
そして、設置後に障害が判明すると、話は一気に複雑になります。機器の問題なのか、施工方法の問題なのか、配線経路の問題なのか。メーカーが対応するのか、施工会社が対応するのか、費用は誰が負担するのか。この段階になると、原因調査だけでも時間がかかり、施主・近隣住民・販売会社・施工会社・メーカーの全員が困ることになります。
だからこそ、一社だけに改善を求めても十分ではありません。住宅用太陽光発電設備が販売され、設計され、施工される一連の流れ全体に、電波障害への配慮を組み込む必要があります。
ハウスメーカーへの提言で狙っていること
今回、複数の主要ハウスメーカーへ提言を送りました。狙いは、個別の住宅に対する苦情ではありません。各社の営業・設計・施工・品質管理の仕組みの中に、電波障害防止の視点を入れてほしいからです。
住宅会社は、単に家を販売して終わる立場ではありません。施主に代わって機器や工法を選び、協力会社を管理し、住宅全体の品質を確保する立場でもあります。そのため、例えば次のような確認を社内手順に追加するだけでも、予防効果は大きいと考えています。
- 現地調査時に近隣のアマチュア無線局や高感度受信設備を確認する
- 屋外に大きなアンテナ設備がある場合は、設計担当者へ情報を引き継ぐ
- 使用するPCSのメーカーと型式、CISPR 11(電磁妨害波に関する国際規格)への適合状況を確認する
- PCSの設置位置や配線経路を事前に検討する
- 不要な配線ループを作らない
- 障害が疑われた場合の連絡窓口と責任分担を明確にする
特別に難しいことを求めているわけではありません。住宅の品質確認項目の中に、「周辺の電波環境」という視点を一つ加えてほしいのです。
住宅会社ごとに、すぐできることと時間がかかることがあると思います。ただ、まず社内の関係部署へ問題が伝わらなければ、何も始まりません。今回の提言は、その最初の入口を作るためのものです。
業界団体への提言で狙っていること
個々の住宅会社だけでなく、業界団体へも提言を送りました。業界団体には、個別案件を直接解決する権限がない場合もあります。それでも、問題を整理し、業界全体へ情報を届けるという重要な役割があります。
実際、環境共生まちづくり協会からは、今回の意見について、
- 協会ホームページの「戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するQ&A」に参考情報として掲載する方向で検討する
- トップページのお知らせ欄でも紹介する
- 会員企業の連絡担当者や各部会参加委員へ意見を共有する
という回答をいただきました。まだ掲載が確定した段階ではなく、内容の確認と調整が行われている段階ですが、これは大きな一歩だと感じています。
個人が一社ずつ連絡するだけでは、情報の広がりには限界があります。一方、業界団体のページに参考情報として掲載されれば、住宅会社・設計者・施工関係者・購入検討者など、より多くの人が参照できる情報になります。また、業界団体から会員企業へ共有されれば、個人からの問い合わせとして処理されるだけでなく、業界として考えるべき課題として認識される可能性があります。これは、提言を出す大きな意味の一つです。
比較サイトや紹介事業者にも伝える理由
太陽光発電設備の購入者は、最初から特定のメーカーや施工会社へ直接相談するとは限りません。多くの場合、インターネット上の比較サイトや紹介サービスを利用します。価格・発電量・保証期間・施工実績・補助金などを比較し、紹介された業者の中から契約先を選ぶことになります。
この入口で電波障害に関する確認項目が一切なければ、購入者がその問題を知る機会はほとんどありません。そこで、比較・紹介事業者へは次のような改善を求めています。
- 業者選定基準に不要電波への対策規格(EMC)や電波障害対策を加える
- PCSの型式や規格適合状況を比較項目にする
- 施工会社への研修項目に不要電波対策を入れる
- 契約前チェックリストに近隣無線局の確認を加える
- 障害発生時の対応体制を業者審査の項目にする
- 購入者向けの記事やQ&Aに電波障害の可能性を掲載する
比較サイトには、単に価格を並べるだけでなく、利用者が安全な業者を選べるようにする役割があります。安い業者を選んだ結果、設置後に近隣トラブルが発生し、追加工事や機器交換が必要になれば、購入者にとっても大きな損失です。電波障害対策は、無線家だけを守るものではありません。購入者自身を、将来のトラブルや予想外の費用負担から守るものでもあります。
共同購入事業へ提言する理由
自治体と民間事業者が連携して行う太陽光発電設備の共同購入事業も増えています。多くの人がまとめて購入することで価格を下げやすくする仕組みで、それ自体には利点があります。
しかし、自治体の名前が付くことで、参加者は「自治体が関わっているのだから、業者や設備の品質も十分に確認されているだろう」と受け止める可能性があります。だからこそ、共同購入事業では価格や保証だけでなく、周辺環境への影響も審査項目に含めるべきです。
- 採用するPCSの適合規格
- 施工会社のノイズ対策能力
- 近隣無線局の確認手順
- 障害発生時の調査体制
- 機器交換や追加対策の責任分担
- 施工業者への教育内容
公的な信用を背景に設備を普及させる以上、導入後に周辺へ問題を起こさないことも、品質の一部として考える必要があります。発電量が多い、価格が安い、保証が長い——それだけでは、住宅設備として十分とは言えません。近隣の生活環境・通信環境と両立できることも、品質の一部です。
仲介業者は「関係ない立場」ではない
不動産会社や土地の販売会社にも、事前に情報を伝えることがあります。もちろん、不動産会社が太陽光発電設備の施工責任を負うわけではありません。まだ家も建っておらず、太陽光発電を設置するかどうかさえ決まっていない段階では、直接対策を求めることもできません。
それでも、土地の購入者や建築会社へ、
という情報を引き継いでもらうことには意味があります。
土地販売の段階で情報が途切れてしまえば、購入者・住宅会社・太陽光施工会社の誰にも伝わらない可能性があります。逆に、早い段階で伝われば、購入者は契約前に業者へ確認できます。設計者はPCSの設置位置や配線経路を検討できます。施工会社も、後から突然指摘されるより、最初から対策を考えられます。
仲介業者に求めているのは施工責任ではありません。必要な情報を、次の担当者へつなぐ役割です。
提言の本当の目的は「責任追及」ではない
こうした活動をしていると、太陽光発電に反対しているのか、近所の設備を止めたいのか、メーカーを攻撃したいのか、と思われることがあるかもしれません。しかし、私の目的はそこではありません。
過去に、近隣住宅で太陽光発電設備の設置前に相談し、機器選定や施工上の配慮をしていただいたことがあります。その設備からは、現在も問題となるノイズは確認されていません。つまり、太陽光発電設備と無線環境は、必ず対立するものではありません。適切な機器を選び、適切に設計・施工すれば、共存できる可能性は十分にあります。
問題は、何も確認せずに設置され、障害が発生した後で初めて関係者が困ることです。私が提言を出しているのは、誰かを責めるためではありません。問題が起きる前に、確認する仕組みを作ってほしいからです。
「誰も知らなかった」が起きる構造
この問題で難しいのは、各担当者がそれぞれ自分の仕事だけを見ていると、誰も全体を確認しないまま設備が完成してしまうことです。
営業担当者は、価格や補助金、発電量を説明する。設計担当者は、屋根の形状や機器配置を考える。施工担当者は、決められた図面どおりに設置する。メーカーは、機器単体の仕様を説明する。不動産会社は、土地や住宅を販売する。比較サイトは、業者を紹介する。
それぞれの担当者は、自分の範囲では仕事をしているかもしれません。しかし、
- 近隣に無線局があるか
- このPCSと配線方法で周囲の受信環境へ影響しないか
- 問題が起きた場合、誰が調査するか
という確認は、どの担当者の仕事にも明確に入っていないことがあります。すると、結果的に誰も確認しません。これが、個人の注意不足だけでは解決できない理由です。必要なのは、善意や知識のある担当者に期待することではなく、確認項目を仕組みに入れることです。
大きなアンテナが見えていても、確認されない
私の自宅には、アマチュア無線用のアンテナ設備があります。近隣から見ても、決して分かりにくい設備ではありません。それでも、周辺で太陽光発電設備が計画・設置される際に、事前確認が行われないことがあります。
これは「アンテナが見えなかった」という単純な問題ではないと思います。そもそも現地調査の項目に、近隣無線局の確認が入っていない可能性があります。確認項目に入っていなければ、担当者は目の前にアンテナがあっても、それを設計や施工へ引き継ぐべき情報だと認識しません。
だから私は、個別の担当者を責めるよりも、現地調査票や施工基準へ項目を追加してほしいと考えています。
たった一つの確認項目でも、その後の流れは大きく変わります。
交信ができるかどうかだけでは判断できない
無線に詳しくない方には、
と思われることがあります。しかし、それは適切な評価方法ではありません。
短波・VHF帯の一種では、電離層の状態によって非常に強い信号が入ることがあります。強い信号であれば、多少ノイズが増えても交信できる場合があります。しかし微弱な信号は違います。従来なら受信できた信号が、バックグラウンドのノイズ水準の上昇によって見えなくなる。わずかに聞こえていた信号が、設備の稼働によって完全に埋もれる。こうした影響こそが、無線受信における実質的な障害です。
したがって、評価すべきなのは次のような同一条件での比較です。
- PCS稼働前後でバックグラウンドのノイズ水準がどう変化するか
- 規則的な干渉音・干渉信号が現れるか
- ウォーターフォールやスペクトル(受信状態を可視化するソフトウェアの画面)に変化があるか
- 設備を停止すると消えるか
- 再投入すると再び現れるか
「その場で誰かと交信できたか」だけで判断してはいけません。
フェライトコアを付ければ終わり、ではない
電波ノイズの話をすると、
という話になることがあります。フェライトコアは有効な対策の一つですが、すべてのケースでそれだけで解決するとは限りません。
ノイズの発生源や伝わり方は複数あります。PCS本体からの放射、直流配線、交流配線、接地系、配線ループ、長いケーブルがアンテナのように働くケース、機器と配線の組み合わせ、設置位置と受信アンテナとの距離——これらが複合的に絡み合うことがあります。そのため、必要に応じて次のような対策を組み合わせて検討する必要があります。
- 低ノイズのPCSへの変更
- PCS設置位置の見直し
- 配線の短縮
- 不要なループの解消
- シールド配線
- 金属管や金属ダクト
- ノイズフィルタ
- フェライトコア
- 接地方法の見直し
大切なのは、最初から一つの対策に決めつけず、原因を確認しながら対応することです。
返信は四つの段階で見ている
今回、複数の企業や団体へ提言を送りました。返事が来たからといって、すべてが同じ意味ではありません。私はおおむね次の四段階に分けて見ています。
1. 受領のみ
問い合わせを受け付けた、という連絡だけの段階です。
2. 関係部署への共有
内容を社内や担当部署へ回した段階です。積水ハウスからは、添付資料を含め関係部署へ共有したうえで今後の参考にする、との回答をいただきました。具体的な改善策の提示ではありませんが、少なくとも担当窓口で止まらず、社内へ情報が回ったことを意味します。
3. 検討
社内手順や掲載内容などについて、検討を始めた段階です。
4. 具体策
資料への掲載、社内基準への追加、会員企業への共有、施工手順の変更など、具体的な行動が示された段階です。環境共生まちづくり協会からの回答は、現時点では掲載へ向けた調整中ですが、掲載場所と会員共有の方向が具体的に示されています。今回寄せられた回答の中では、非常に前向きなものだと受け止めています。
すぐに結果が出なくても、提言には意味がある
企業や団体へ意見を送っても、すぐに制度が変わるわけではありません。回答が定型文で終わることもあります。関係部署へ共有された後、表面上は何も起きないこともあります。それでも、提言を出す意味はあります。
記録が残るからです。
今後、同様の問題が別の地域で起きたとき、
とは言いにくくなります。
複数の企業や団体へ同じ問題が伝われば、単なる個人の特殊な要望ではなく、業界として対応を検討すべき課題として認識される可能性が高まります。また、社内で新しい施工基準やチェックリストを作る際に、過去に寄せられた意見が参考資料として使われることもあります。提言は、すぐに目に見える結果だけを求めるものではありません。問題を、社会や業界の記録に残す行為でもあります。
無線家だけの問題ではない
この問題は、アマチュア無線家だけの特殊な趣味の問題と思われがちです。しかし、不要電波の影響を受ける可能性があるのは、アマチュア無線だけではありません。設備や周波数、距離、施工条件によっては、各種無線通信やラジオ受信などへ影響する可能性があります。
また、設置後に近隣トラブルになれば、施主にとっても大きな負担です。施主は、専門知識を持って設備を設計したわけではありません。販売会社や施工会社を信頼して購入しているだけです。それにもかかわらず、問題が起きた後に近隣との間へ立たされるのは、あまりにも気の毒です。だからこそ、責任を施主へ押し付けるのではなく、専門知識を持つ販売・設計・施工・メーカー側が事前に確認すべきなのです。
本当のゴールは、私が連絡しなくても確認されること
今は、私自身が周辺の工事に気づき、住宅会社や施工関係者へ連絡しています。しかし本来は、近隣住民が個別に気づいて申し入れなければならない仕組みでは不十分です。
理想は、住宅会社や施工会社が現地調査の段階でアンテナ設備を確認し、自ら連絡してくることです。
- 近隣に無線局があるため、使用するPCSと施工方法について確認しました
- 設置前後で影響がないか確認させてください
- 問題が出た場合はこちらが窓口になります
このような対応が、特別なことではなく通常の業務として行われるようになること。それが本当のゴールです。
価格だけでなく、周囲と共存できる設備を
太陽光発電設備は、長期間使用する住宅設備です。契約時に多少安くても、設置後に問題が起きれば、調査・追加工事・機器交換・近隣対応など、より大きな負担につながります。
これから太陽光発電設備を購入する方には、価格や補助金だけでなく、次の点も確認してほしいと思います。
- 近隣環境の現地調査を行ったか
- 使用するPCSのメーカーと型式は何か
- 規格への適合状況はどうか
- PCSの設置場所と配線経路はどうなるか
- 不要電波への対策を施工段階で検討しているか
- 障害が起きた場合、誰が調査し、誰が対策費用を負担するのか
こうした質問に明確に答えられる業者を選ぶことは、購入者自身を守ることにもなります。
最後に
今回、複数の住宅会社、団体、比較・紹介事業者、共同購入事業者などへ提言を送りました。目的は、誰かを攻撃することではありません。太陽光発電設備を安心して普及させるために、今まで見落とされがちだった電波環境への配慮を、販売・設計・施工の仕組みへ入れてほしいのです。
太陽光発電と無線環境は、適切な機器選定と施工によって両立できます。問題が起きてから責任を押し付け合うのではなく、問題が起きないように最初に確認する。そのほうが、施主にとっても、近隣住民にとっても、住宅会社や施工会社にとっても、はるかに良いはずです。
今回の働きかけが、業界や購入者の中に、
という考え方を少しでも広げるきっかけになればと思っています。
【参考資料】
- 総務省「太陽光発電システムを原因とする無線通信の妨害について」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/ele/pvsystem/index.htm - 一般社団法人 太陽光発電協会「太陽光発電協会 販売規準」
https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/hanbaikijun_pamphlet.pdf - 一般社団法人 環境共生住宅推進協議会「戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するQ&A」(p.52-53, p.127-128)
https://www.kkj.or.jp/contents/build_hojyojigyo/report/R04_PVset_qa.pdf - NEDO「建物設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2024年版」
https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/nedo_guideline2024.pdf

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