製品事故の対応2014年04月07日 11時13分44秒

無線機に限らずどんな製品でも発火や発煙をした場合、直ちにアクションを取る必要性があります。

・連絡を受けた時点で、危機管理担当に移管する。     
(通常の受付担当者ではないという意味で、係長でも課長でも可)  

・「重大な事と受け止めているので、何が起きたか確認したい。   火事につながるような事であるのか、どの部品の問題か、その原因は何かを急いで調べたい。
ついては、機械を預からせてほしい」  

・「まず、現物を見たい。修理の内容などは、そのうえでご相談したい」
 この段階での修理料金を語るのは、絶対に避けるべき事項。   

・急いで現象を確認し、報告書を提出する。現物を受け取って、翌日には
 「内部で燃えていたか、火事につながる可能性があったか」の暫定報告書を発行する。

くらいの対応が必要です。

しかしながら今回の件で最初に電話したときには、「通常の修理受付のような感じ」で話されていました。預からせて欲しいとも言われま せんでしたし、何がおきたか確認したいとも言われませんでしたし、基板交換 ならば費用がかさむとは言われましたが、私としては壊れたままでは困るので サポートに送付しました。自社製品を使用中に発煙したという事実を聞いてもなんの危機感もなかったです。

国の制度からいうと今回の件は、消費生活用品安全法の製品事故にあたる 可能性があります
製品事故の定義は、   消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であって、一般消費者の生命   又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもの です。 http://www.meti.go.jp/product_safety/producer/point/03-1.html

アマチュア無線用なので、消費生活用品にあたるし、誤った使い方はして いない。火事になる恐れがないとは言えないし、火が出ればやけどをする可能性もありまた。しかし私は生きており死者はないし、やけども回避したので負傷者もいませんので重大製品事故には相当しませんから、この会社は国に本件を報告する義務はありません。しかし、次のURLの4ページ⑩にあるとおり、 本件を経産省の外郭団体(NITE)に知らせることが望ましいとされています。  http://www.meti.go.jp/product_safety/policy/guideline_selfaction.pdf

この会社が何かしらの対応をしない場合は、消費者である私が情報を提供すること になりますが、それはこの会社に対する嫌がらせではなく、国の施策への協力という ことになります。 消費者の場合は、国民生活センターまたは消費者庁への情報提供ということに なります。  http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html

この会社にはNITEへの情報提供をして欲しいと要請します。 もし拒否するようでしたらば、消費者である私からからNITEに情報提供をします。「窓口が違うのは知っているが、参考のためにお知らせします」 と。

この方法はどんな会社のどんな製品にでも応用可能です。

数名の方から会社名と製品名のの問い合わせがありましたが、現時点では直接書く事は避けます

追記:  週が開けて月曜日の今日、私の出したメールは既読となっています。しかし今は13時前ですがなんのアクションもありません。 参考まで。

追記2 :   17時ちょっと前にサポートの長から電話が来ました。 着払いで再度送って欲しいと。 品質管理部門へ回して解析するとの事。時間はかかりましたがまっとうな連絡がきてほっとしています。私としては無償で修理してほしいわけではなく、数少ない無線機メーカーがもし他の発火事故で窮地に陥っては困りますので原因を追求して欲しい、という事と当然ですが金品を要求するつもりもないことを担当者に伝えてあります。。

追記3 :    サポートから解析に時間をかけたいとの連絡がありました。時間はかかると思っていますのでそれは問題ありません。 

追記4:   サポートから電話が二回ほどかかってきています。同じ条件で長期テストを実施しているとのことでした。多くの方がお使いのリグですので時間をかけて解析してくださいと伝えました。連休前の話です。

追記5 :     さて、5月末になって来ましたが、その後の進捗状況の報告はありません。そろそろ連絡が欲しいのですが、こちらから急かしても仕方ないので今月中は待つことにします。 再現性が無いということなのでしょうか?  5/28

追記6 :  5月末に詳しい報告書とともにリグが帰ってきました。

まずこのリグの素性ですが、中古で購入した物です。中古品を販売する無線機販売店から購入しました。購入後すぐに不具合を発見し、サポートに持ち込み修理をしてもらっています。今回の事象は自宅で運用中に発生しました。HF-430 オールモード機です。自宅では 144/430 しか使用していません。その他のバンドは固定機を持っている為です。
自分で蓋を開けた事があるのは、オプションのCWフィルターを取り付けたときだけです。もともと電気工作とかはあまり得意ではありませんので自分ではしません。

以下修理歴です。
2011年2月  50MHz感度不良   50MHz RF-AMP 不良の為交換。
2011年7月  送信不安定      50MHz発信傾向、他バンドでの不
                                                     具合再現は無し。PA グランド周り
                                                     等、見直し。
2013年11月  50MHz感度不良再発、PTTで送信せず、144/430受信感度点検
         50MHz RF-AMP不良の為交換 PTTグランド側部品焼損の
                         為交換。
2014年4月  今回の事象430 FMで送信中に発煙、です。

最初の感度不良発見は、まだ箕面市にいた頃、IC-575との感度の差に気がつき修理を依頼しました。
2つ目の事象も箕面市で発見。
3つ目は東京の自宅で発見。東京の自宅では送受は144/430のみ。50MHzのサブ機はIC-575を使用している為、運用時に受信用に用いた実績はありません。
4つ目は430 FMでCQを出しているときに発生。この事象発生以前より、430でラグチュー時に時々送信が途切れる事がありました。

報告書を読んだところ、大変丁寧な調査がされていると思いました。再現実験などもきちんとされています。
報告書によるとこの機種はコマンドの設定値で出力を可変できるのですが、当該バンドである430MHzで規定値に対して+10の状態であったとの事。私自身が設定したわけではなく、購入当初のままですので前オーナーが実施したものと思慮されます。私自身が設定したとしたら自業自得ですのでメーカーには何も言わず自ら廃棄していたでしょう。

基板の状態では 144/430 の終段増幅器で基板が損傷していたとの事。
「半田面の出力側が黒く炭化し、配線パターンは緑色のレジストが無くなり銅が露出。どうも発熱に因る変色有り。炭化していた部分には配線を接続する4つのスルーホールがあるが、430MHz帯の送信中にはDC電源とRF出力の両方がここに流れる事から、出力が大きい場合は発熱した可能性がある。」

「終段増幅デバイスの入出力リード(端子)が半分の長さに切られていた。また本来ネジだけで止めている銅製の板バネが半田で固定されていた。」

「出力側のランドは、半田吸収線で半田を除去した様にきれていになっており、半田吸収線の物と思われる脂(ペースト)の跡があった。出力側のリードとランド位置が少しずれていた」

「基板には何れも生産時の指示にはない作業がされていた」

「シャーシの確認では、炭化した基板と向かい合う部分に噴出物の付着があった」

「430MHzでの再現実験を行った。連続送信、送受繰り返し、ANT負荷のミスマッチについて電源電圧や送信出力の調整値を上げて実験をしたが再現には至らず。」
「再現実験の過程で出力マッチング用のコンデンサー取り付け位置の違いにより、4つのスルーホールそれぞれが異なる温度に発熱する事が分かった。これは高周波電流が4つのスルーホールに均等に流れている事を示す。」

「基板の状況で工場生産時の半田付けや部品の取り付け方法とは異なる部分があり、半田付け不良が原因と推測。半田付け不良の為スルーホールに電流が集中して発熱したと仮定し再実験を実施」

「4つのスルーホールの一部を耐熱絶縁テープでふさぎ、終段増幅器のリードには直接触れないようにし、残りのスルーホールに意図的に高周波電流を集中させて様子を観測。4つのスルーホールのうち一部をテープでふさぎ、擬似負荷と無線機の間にはチューナーを挿入し、送信電力と消費電流のどちらも最大になるように設定。定格出力20Wでは再現しなかった為出力を大きくして実験。」

「4個中3個のスルーホールを塞いだ場合、送信出力は最大25W。温度上昇は緩やかで、スルーホール周辺の温度は条件を変えても最大150度。」
「4個中2個のスルーホールを塞いだ場合、送信出力は32Wになり、送信後約3分でスルーホール周辺の温度は200度に達した。7分後スルーホール周辺が断続的に発光開始。」
「連続送信して8分後に 発火・発煙。」

「まとめ。量産品にて再現実験を実施したが、工事用出荷時の調整された状態では、発煙・焼損などの不具合症状に至る事はなかった。 工場出荷時の調整値を変更し、電源電圧を上げ、送信出力を増大させ、144/430終段増幅器のスルーホールの一部を塞ぎ、擬似的に半田付け不良を作る事で、発煙・焼損などの不具合症状を再現する事ができた。」
「今回の再実験により、通常の運用状態では安全に使用できる製品と判断できる。」

報告書の概要は以上です。私自身は終段増幅器をいじる事もしていませんし、調整値をいじってもいません。また事象発生以前に3回メーカー修理に出しておりましたので「通常の運用状態」と認識していました。実態としては違っていたわけでメーカーに迷惑をかけてしまったと思っています。ただ、電源電圧は13.8Vで間違いありませんでした。

知り合いの専門家からは以下のようなコメントを頂きました。

1) きちんと調査し、誠実に報告していると思います。
  ごまかそうという意図は感じられませんでした。ややもすると、
      再現の条件をでっち上げたくなるのですが、それはなさそうです。   
  一方で、2)、3)にあげる問題点も見えてしまいます。

2) 設計の問題   
  素子のばらつきを設定値で調整しようという設計は、理解できます。   
  半固定VRで電流値を変えるのと同じようなものです。   
  *極端な数値になった(工場出荷時のミス、出荷後に何者かが変えた)時に
  加熱し、部品が燃える設計は問題がある。もうひとつ保護回路 などをつける
  べきだったかもしれない   
  *ほこりなどでスルーホールが詰まることもありうるので、スルーホールが
  ふさがれると発火する設計には問題がある。もっとたくさんスルーホールを
  もうけるなど、すべきだったろう。
 3) 修理時の検査   
  設定がかわっていることは、出力を測ればわかったはず。ユーザから
      言われたこと以外のチェックをしていないことになる。全バンドの
      出力を測るくらいのことはするものだと思っていたが。

 メーカーからは無償修理との連額が来ました。当初より金品の要求をするつもりも、無償修理にして欲しいという要求 も無いと伝えていましたし、自分のセットがそのような物とは知らず調査を依頼しましたので、「無償にすると言われたが私としてはそれでは受け取れない、はなから無償修理を狙っていたと思われかねない。なにがしかの修理代金を請求していただかないと困る。」と伝えました。
しかし 「修理の際、手の加えられた部分を見落としていた。」 「発煙時の初動体制の不手際等大変不愉快な思いをさせてしまいました。」 修理費用に関しましては、社としての意向で無償とします。 と再度伝えられやむを得ず受領しました。

メーカーには大変感謝しております。今後も大事に使用していきたいと思っております。

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